劉備と劉表の関係値
劉備が劉表の元に身を寄せいていた頃、
劉表は劉備を厚遇し、新野城を任せていたほどでした。
新野城を任せていたのは対曹操用でもあったのでしょうけどね。
そんな中で博望坡の戦いが起こったりと・・・
そして劉表の死期が近づいてくると、
後継者を自分の息子であった劉琦・劉琮の二人にではなく、
劉備に後釜を任せるように考えるようになっていったといいます。
ちなみにこの後継者に関する話は、
三国志演義で使われているだけの内容になります。
かつて陶謙が劉備に跡を継がせたようなことはなく、
「劉備に跡を継がせようとした」といった記録はありません。
むしろ正史に記載されている内容からは、
多くの人材が劉備になびいている現状に大きな不安を抱いていたとされています。
劉備殺害計画（蔡瑁・蒯越）
劉表の劉備への待遇に対して大きな不満を抱いていたのが、
劉表の臣下の一人であった蔡瑁という人物でした
蔡瑁は蒯越と共に酒宴を設けて、
「劉備殺害計画」を立てたのでした。
ちなみに蔡瑁も蒯越も荊州を代表する豪族であり、
劉表がうまく荊州を治めることができた背景には、
二人の力が大きく影響していたことも事実でした。
しかし蔡瑁・蒯越と同じく、劉表の臣下であった伊籍は、
劉備に対して好意を抱いていたこともあり、
蔡瑁・蒯越らの企みを知った伊籍は、
こっそりとその事実を劉備に知らせています。
これを聞いた劉備は、厠（便所）に行く振りを見せ、
愛馬であった的盧にまたがると、
その場から急いで逃げ去ったといいます。
劉備に自分たちの計画がばれたことに気づいた蔡瑁らは、
急ぎ劉備へと追手を差し向けたのでした。
蔡瑁らの追手に追われていた劉備ですが、
崖になっている「檀渓」の急流へと追い詰められることとなります。
そこで前に行っても後ろに行っても「死」ならばということで、
「的盧よ、お前はとうとう我を祟ったか！」と声を発し、
一か八かにかけた劉備は、檀渓へ向かって馬もろとも飛んだのでした。
「結果として劉備は死なず、
九死に一生を得て助かった」という話になります。
三国志演義＆魏晋世語
まぁこの逸話は三国志演義の名場面の話ではありますが、
実際にこの檀渓の話は「蜀志」先主伝の注釈として残っています。
ちなみに注釈を加えたのは裴松之で、
「魏晋世語」の中に記載された逸話が付け加えられていますね。
『ただ「魏晋世語」は知識が乏しい書物であり、
誤った事も多く書かれている』と裴松之があわせて言ってますが、
その上で普通に三国志に注釈として加えている感じで、
檀渓の的盧の話もその一つになります。
また「魏晋世語」は、
郭頒（西晋）によって著されたものではありますが、
「魏晋世語」は現在では散逸してしまっており、
裴松之が注釈を加えたものだけが現在に伝わっている感じになります。
劉備は本当に檀渓を飛んだのか！？
横山光輝三国志（２０巻１０３P）より画像引用
上でも軽く触れてはいますが、
正史にある劉備と劉表の関係値は決して良いものではなかったようです。
劉備の不思議な魅力に劉表が嫉妬していた話からもそれがうかがえます。
ただだからといって劉表の命令で、
蔡瑁・蒯越が「劉備殺害計画」を立てたという話は、
正史には一言も出てきていません。
ましてや蔡瑁・蒯越が、
独断で「劉備殺害」を計画したという話もありません。
ただ裴松之が加えた「蜀志」先主伝の注釈にだけ、
そのことが記載されており、
「三国志演義で更なる脚色が加えられている」
といった所になりますね。
