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三国志演義での魏延の反乱に関する描写
横山光輝三国志（59巻204P）より画像引用
五丈原で孔明が病死すると、楊儀が蜀軍を率いて退却を始めます。
これに対して、魏延は相当な怒りを覚えます。
そして孔明の棺を持って帰国している楊儀を先回りをし、
桟道を焼き払い、帰国できないようにします。
この時に劉禅に対して「楊儀が謀反した」と書簡を同時に送ってます。
しかし楊儀も、橋を架けなおし、
「魏延が謀反をした」と劉禅の元へ書簡を届けました。
二人から届いた書簡を見て、劉禅はどうしたらいいかを蒋琬・董允に尋ねます。
それに対して二人は、楊儀を信用し、魏延を疑います。
最終的には魏延が謀反を起こしたと結論づけ、
魏延は討伐されてしまいます。
そして逃げようとした魏延を馬岱（ばたい）が討ち取って、この事件は収まります。
魏延の首を見た楊儀の反応
討ち取られた魏延の首が楊儀の元へ届けられた時の話ですが、
魏延の首を見た楊儀は、
「もう二度と悪さができないだろう！」と言って、魏延の首を踏みつけたそうです。
それほどの憎しみがでるぐらいに、楊儀は魏延を嫌っていたのでしょう。
また斬られた魏延も同様だったかと・・・
ただ死後にここまでするのはさすがに周りから見た場合、
楊儀の評価を普通に下げる事になることぐらい想像できなかったんでしょうかね？
だからこそ回り回って、
楊儀自身もろくな最期を迎えなかった気がします。
楊儀によって作りあげられた魏延の姿
正史にもきちんと楊儀と魏延が戦って、
最終的に馬岱が魏延を討ったという記載が残っています。
しかし魏延が謀反を起こしたというのは、私は少し違うと思います。
普段から魏延と楊儀は仲が非常に悪かったこともあり、
孔明が死んだ時にもし魏延が蜀軍を指揮を任さることがあれば、
「間違いなく自分は魏延に殺されるだろう」と疑心暗鬼に陥っていたといいます。
そこで楊儀が取った行動は、
「魏延は魏へ寝返りを画策している！」と周りに言いふらしたようです。
そういうことが重なって、魏延は謀反人として馬岱に討ち取られてたわけですからね。
魏延が謀反を起こしたというより、
仲が悪かった楊儀に無理やりに作り上げられた姿だったと言ってもいい気がします。
劉備と魏延の関係性から探る
長く蜀の為に尽くして頑張ってきた魏延が、
楊儀が嫌いというだけで謀反するとは考えにくいです。
劉備は魏延のことを大変高く評価していましたし、
非常に期待をして魏延に報いています。
漢中を制圧した時も、義兄弟の張飛を差し置いて漢中を魏延に任せるという大抜擢！
そして魏延自身も劉備の期待に応えたくて、
懸命に蜀の為に働いていましたし、
劉備が亡くなった後も魏延は変わりませんでした。
この点だけを切り取っても「魏延が謀反した」というのは考えにくいです。
三国志演義に利用された伏線
三国志演義には、魏延が仲間になった際に、
魏延の頭蓋骨が後部に出ているのをみて、
孔明が「魏延はいつか裏切るだろう」と意味も分からない難癖をつけたことがありました。
劉備はそんなの関係ないと取り合いませんでしたが、
孔明は非常に気にしていたような描写で描かれていたんですよ。
この時の孔明が発言したことの伏線として、
「魏延が謀反した」として三国志演義の話にも繋がりを持たせたのでしょう。
なので正史に書かれているように、
魏延が楊儀と対立し、馬岱に斬られたという結末でなかったならば、
三国志演義で魏延が「反骨の相」と孔明に難癖を言われる事もなかった気がします。
結局のところ魏延は謀反したのか？
魏延の考えは、もっと単純だった気がします。
劉備が描いた「漢王朝復興」という夢を自分が先頭になって叶えたかっただけで、
その中で楊儀とぶつかって、
結果的に敗れてしまった魏延が悪者にされただけではないかと・・・
少なくとも私はそう思っています。
・・・というかそう思うのが逆に普通の気がします。
なんでも目に入ってきたことだけが真実ではないですし、
色々な視点からその事象を見ることで、少なからず見えてくるものはあると思います。
そしてなによりも歴史は勝者によってしか書かれません。
殺されてしまった魏延は善人にも悪人にもどうにでも、
仕立て上げる事が可能な事を忘れてはいけないかと思うわけです。
