現在私たちが正月に当たり前のように飲んでいる御屠蘇おとそですが、

その由来を知らない人は多いかもしれません。

 

何故ならばそれが習慣化してしまっているからであり、

由来すら考えることも普段無くなっているほどに浸透しているからだと思います。

 

 

ただ言ってしまうと、「御屠蘇」を最初に考え出したのは、

三国時代の名医であった華佗でした。

 

 

華佗は動物の動きを取り入れた五禽戯ごきんぎといった健康法を生み出したりと、

医療の延長線上として考え出したものが他にもあったりしますし、

 

なによりこの五禽戯も現在に伝わっていたりするのは余談であったりします。

華佗に治療を受けた事がある人達とその治療法

華佗の編み出した健康法「五禽戯(ごきんぎ)」

御屠蘇の由来

正月に「無病長寿」を願って飲まれる事が多い御屠蘇ですが、

もともと御屠蘇が誕生した経緯として、華佗が曹操に振舞ったのが始まりでした。

 

正式名称としては「屠蘇延命散(屠蘇散)」といいます。

 

 

そもそもの話として、

華佗が曹操に「お屠蘇」を振舞ったきっかけについて見ていきますと、

 

それは華佗が曹操に招かれていた時の話でした。

 

 

曹操は美味しいお酒を造る事に懸命に取り組んだ人物でもあり、

 

それほどまでにお酒が好きな曹操に対して、

薬草(漢方)を酒に混ぜて飲ませたのが始まりなわけです。

 

そうやって生まれた御屠蘇ですが、

「自然と民衆へ広がっていった」と言われています。

 

 

そして華佗がどんなものを酒に入れたかというか

以下のものを粉末状にして混ぜていたといわれています。

  • 赤朮(せきじゅつ/現在の青朮)
  • 蜀椒(さんしょう)
  • 細辛(さいしん)
  • 大黄(だいおう)
  • 桔梗(ききょう)
  • 防風(ぼうふう)

 

 

そして華佗がこれらを混ぜた理由は、

 

寒い冬を無事に乗り越え、

健康に過ごせるようにと考え出したものであり、

 

 

「邪気をほふり、魂を蘇らせる」

という意味を含めて「お屠蘇」と名付けたと言われています。

御屠蘇の伝承

華佗が「御屠蘇」を初めて作って曹操に献上した話は

晋時代の書物である「小品方」という医学書に書かれてあります。

 

 

そしてこの「お屠蘇」は、華佗が処刑されてしまう事で、

華佗の医術方法と同様に資料が残されないまま消えてしまうわけですが、

 

曹操が生きていた時代より、

約百年後にあたる隋や唐の歴史書にも御屠蘇が登場する事からも、

 

どういったいきさつかは不明ですが、人々によって作り方が伝承されていたと思われます。

 

 

華佗は寒い時期に御屠蘇を飲む事で、

 

「一年間健康に過ごせますように!」

という願いを込めたわけですね。

 

 

日本では794年から平安時代に突入するのですが、

その時代に御屠蘇は唐から日本へと伝わりました。

 

何故なら御屠蘇に関する記載が、

紀貫之の土佐日記に記されているからですね。

 

ちなみに平安時代の天皇であった嵯峨天皇も、

正月には「お屠蘇」を飲んでいたようです。

 

 

この頃は誰でも御屠蘇を飲んでいたわけではありませんが、

江戸時代の頃には民衆にも一般的に広まっており、

 

正月の良い風習として現在にも受け継がれているのは既存の事実ですね。

御屠蘇の飲み方

「お屠蘇」についての飲み方ですが、

 

1712年(江戸時代)に書かれた和漢三才図会わかんさんさいずえに記載が残っていますので、

それを紹介したいと思います。

  1. 「御屠蘇」に入れるための薬草(漢方)を三角形のモミ袋に入れて、大晦日に井戸に入れておく。
  2. 正月になって井戸に入れておいた約束(漢方)を取り出す。
  3. 取り出したものを酒に入れて、数回沸騰させてあげる。
  4. 家族みんなで東を向いて、年齢が若い者から順に「御屠蘇」を飲んでいく。

 

これが御屠蘇を飲む際の正式な順番であると書かれています。

 

現在の私達の感覚からすると、

年長者から順にお酒を飲んでいくというのが一般的な感じがしますが、

 

それとは真逆の飲み方が本来の飲み方だったわけです。

 

 

「年少者から飲む」というのには意味があり、

毒見の意味があったからといいます。

 

 

また御屠蘇で残ったもの(薬草の粉末など)は井戸に戻し、

 

年を取るごとにこの井戸の水を使った御屠蘇を飲むと、

いつまでも健康に過ごせるという風にも書かれてありますね。

御屠蘇に効果はあるのか!?

もともと御屠蘇を飲む目的は、

 

寒い冬の間に邪気が体内に侵入し、

春になったら病気として発症する事を防ぐ為に飲んでいました。

 

 

今では暖房や電気ストーブ等、

冬を温かく過ごすための環境が整っていますが、

 

当時はそんなものは普通にありません。

 

 

その為に病気にかかる人が多かったのも事実なのです。

 

 

例えば赤朮は胃を健康にする効果があります。

 

大黄にしても胃や腸の働きを良くし、

悪いものを体内から出す働きがあります。

 

また山椒にしてもそうです。

腸の働きを良くしたり、発汗作用をよくしてくれます。

 

 

このように胃腸に良いものを調合しており、

一つ一つの薬草(漢方)に意味がきちんとあるわけです。

 

またそれだけでなく血液循環を促してくれる酒に混ぜた事で、

更なる効果が生まれた事でしょう。

 

 

何よりきちんとした効果があったからこそ、口伝えで後の時代まで伝わったのでしょし、

日本に伝わってから現在に至るまでも良い風習として残っているだと思います。

 

それが御屠蘇が良い者であった事の何よりの証拠でしょう。

 

もしも良くないものであったならば、

長く伝わる以前に「お屠蘇」の風習はどこかで間違いなく終わっていたでしょうから・・・