「神医」華佗

三国時代に「神医」と称された華佗かだという人物がいましたが、

 

陳寿が書いた三国志正史にも登場しており、

華佗の医術のレベルは、当時比べる者がいないと言われるほどに飛びぬけていました。

 

また華佗は「世界で初めて麻酔「麻沸散まふつさん」を作った医者」だと言われていますが、

麻沸散の作り方などに関する資料は残っていません。

 

 

華佗のそういった治療に関すしてについて注目されがちですが、

 

実際華佗が治療をする際は、

「治療以外に手段がない」という時に限られていました。

 

華佗の考えとして、普段から体を良い状態にしておくことが最も大事だと考えており、

その為に考え出したのが五禽戯ごきんぎです。

五禽戯とは?

五禽戯ごきんぎは、華佗が編み出したもので、

「鹿・猿・熊・鳥・虎」の動物の動きを真似るという健康法です。

  • 鹿戯
  • 猿戯
  • 熊戯
  • 鳥戯
  • 虎戯

 

 

華佗が五禽戯を推奨した目的は、

病気になる前に、その病気を未然に防ぐ事が大事だと考えていたからです。

 

病気になってからでも治療はできるけれども、

普段から健康な体作りを華佗は推奨していたわけですね。

 

 

そして華佗が「鹿・猿・熊・鳥・虎」のこれらの動物や鳥を選んだのには理由があり、

これらの動きをすることで経絡を通して、五臓六腑の働きをよくすることができると考えていたからです。

 

また五禽戯には、陰陽五行説を取り入れて作られています。

 

 

華佗の手術には、相手を怒らせたり、心配させたり、恐怖を与えたりして、

その結果として治癒させたような話がいくつも残っていますが、

 

これもおそらくですが、

陰陽五行説を華佗なりに応用させて治療に取り入れていたのでしょうね。

華佗に治療を受けた事がある人達とその治療法

鹿戯

 

鹿戯は両手の指で鹿の角をイメージし、

鹿のような優雅な様をイメージして小走りに歩き、伸びやかに体を動かす感じで行います。

 

肝臓や胆のうが弱ると、吐き気が襲ってきたり、

筋肉や血管障害を引き起こしたりするおそれがあります。

 

陰陽五行説:木に所属・春(季節)・青(色)
効果:ストレス発散・筋肉の強化
臓器の効能:肝臓・胆のうの活性化

猿戯

 

猿戯は素早い動作で、

木から木へ飛び移っていくようなイメージで行います。

 

心臓が弱くなると、高血圧や動悸に見まわれ、

症状が悪化していくと、心筋梗塞を引き起こしたりするおそれがあります。

 

陰陽五行説:火に所属・夏(季節)・赤(色)
効果:ストレス発散・関節の強化
臓器の効能:脳・心臓・腸(小腸)の活性化

熊戯

 

熊戯は、のんびりかつ穏やかな動きで、

熊のどっしりとした感じをイメージしながら行います。

 

脾臓が弱くなると、低血圧になりやすく貧血を起こしたりします。

また精神不安定になりやすくなるので注意が必要です。

 

陰陽五行説:土に所属・土用(季節)・黄(色)
効果:腰の強化・消化器系統の強化
臓器の効能:脾臓・胃の活性化

鳥戯

 

鳥戯は、鳥の中でも鶴を参考にした動きと言われており、

両腕(手)を羽に見立てて、後ろに両腕を広げて軽やかに羽を動かすイメージで行います。

 

肺機能が低下すると、呼吸不全やせきを催したり、

発汗異常や鼻の調子が悪くなったりします。

 

陰陽五行説:金に所属・秋(季節)・白(色)
効果:背骨・腰の強化・肺機能の強化
臓器の効能:肺・腸(大腸)の活性化

虎戯

 

虎戯は勇猛であり、

前足の力を使って獲物に襲い掛かる虎のイメージで行います。

 

この際に両手両足の指先に力をきちんとこめて、

獲物を狙う鋭い目で行うように意識します。

 

陰陽五行説:水に所属・冬(季節)・黒(色)
効果:腰・足・骨の強化
臓器の効能:腎臓・膀胱の活性化

華佗の「神医」と呼ばれた所以

五禽戯は、上で述べたように「鹿・猿・熊・鳥・虎」の動きを真似る事で、

 

体が不健康になることを防ぎ、

その延長線上で五臓六腑を強化してくれるものです。

 

五臓六腑が普段から活性化されていれば、病気になりにくい健康な体になります。

 

そのように普段から体を健康にしていれば、未然に病気を防げることができ、

それが何よりの最大の治療法であると華佗は考えたのでしょう。

 

どんな難しい病気でも最善を尽くして治療はできるけれども、

治療はあくまで最終手段であり、それを未然に防いで治療しないで済む体作りを推奨してたわけですね。

 

 

そんな華佗ですが、自らが天寿を全うする事はありませんでした。

何故なら208年に曹操に処刑されてしまったからです。

 

しかし「華佗は既に百歳を超えていた」と言われていましたが、

百歳を超えてるとは思えないほど若々しい感じだったといいます。

華佗の弟子(呉普・樊阿)

五禽戯をしていた華佗の弟子であった呉普ごふは、

九十歳を超えるまで長生きしています。

 

そして呉普は死ぬまで目や耳が悪くなることはなく、

歯も抜け落ちる事がなかったそうです。

 

 

そして華佗にはもう一人、樊阿はんあという弟子がいましたが、

樊阿も同じく百歳を超えるまで長生きしています。

 

 

実際問題、樊阿が五禽戯を実行していたかは不明ですが、

おそらく華佗の弟子であったからには実行していたとみるのが自然だと思いますね。

 

ただ樊阿の方で記録にあるのは、漆と青黏せいねんを使った薬の作り方を華佗から教えて貰い、

その薬を飲み続けた結果、百歳まで生きたような書き方でされています。

華佗の二人の弟子(呉普&樊阿)