廖立（りょうりつ）
廖立は荊州の武陵郡の出身で、
劉備が荊州南部を制圧した際に仕えています。
また劉備は廖立を高く評価し、
長沙太守であった金旋の後釜として任命しています。
廖立は仕えて早々、大抜擢されたのです。
劉備はそれだけ廖立を高く評価していたわけです。
諸葛亮も大絶賛
同盟関係にあった孫権のもとから使者が訪れた時、
「荊州の中で優れた人物は誰か」と聞かれた事がありました。
この時、孔明は、
「荊州には、龐統と廖立の傑物がいる。
この二人はいずれ大功を立て、いずれ名を残す人物でしょう」
と龐統と並べて廖立を大絶賛しています。
劉備と諸葛亮にここまで認められていた事を考えると、
出会ってすぐの廖立には、並々ならぬ可能性を感じる事ができたのでしょう。
廖立、長沙から逃亡
劉備が劉璋を降し、益州を手に入れて後、
なかなか劉備が荊州を返還しない事を理由に、
孫権と荊州での争いが勃発します。
この際、長沙を守っていた廖立は簡単に長沙を捨て、
益州へ逃げ帰っています。
しかし劉備は廖立を評価していた為、
廖立に軽く注意しただけで、かわり巴郡太守に任命しています。
そして劉備が漢中王になった219年、今度は侍中に大抜擢されています。
劉備はここでも変わらず廖立を高く評価したのです。
実績が過去あったわけではないのに、
これだけ評価されたというのは、さすがに何故なんだろうと思ってしまいます。
劉備にしか感じれないものが何かあったのかもしれません。
劉備の死で狂い始めた歯車
劉備が夷陵の戦いで孫権に敗れ、
白帝城で劉備がこの世を去ると、廖立の立場に暗雲が立ち込めてきます。
これまでは自分自身を評価してくれてた劉備のお陰で、
大きな手柄がなくとも短期的に出世してきました。
しかし劉備が死んで劉禅が跡を継ぐと、
長水校尉（名誉職）に官位を落とされてしまいます。
何の功績もなかったため、
ある意味当たり前と言えば当たり前のことなのですが、
この待遇に対して廖立は不満を漏らし始めます。
自分の評価と周りからの評価にズレが発生してきたわけです。
廖立の失脚
廖立は自分自身の才能を非常に高く評価していました。
才能的には諸葛亮の次に自分が優れていると思っていたようです。
そして自分より後に入った李厳の方が評価され、
今では李厳の下についている自分に対しても納得できなかったようです。
この時廖立は、李厳より上の位である「卿」にしてくれるようにお願いしていますが、
「李厳ですら卿になってないのに、何言ってるんだ？」と一蹴されています。
そんな最中、蒋琬と李邵（りしょう）が尋ねてきた時のこと、
ここで廖立の不満が大爆発します。
「劉備様がぐずぐずしていたから漢中制圧に失敗しそうになったし、
関羽が傲慢過ぎたために、荊州を失ってしまった。
また向朗・文恭・王連らは大した人物でもないし、
郭攸之ごときが前に自分がやっていた侍中に任命されてる。
意味不明な人事だ！」
と先帝の劉備から現役の役職者にを批判してしまいます。
これを聞いた蒋琬と李邵は、
廖立のこれらの言葉をそのまま孔明に知らせます。
これを聞いた孔明は、廖立の才能は過去認めていたものの、
国が乱れる元になると判断し、孔明は処刑しようとしますが、
劉禅の優しさで汶山郡への流罪で済ませています。
これによって廖立は庶民にまで落ちてしまったわけです。
諸葛亮の死を悲しんで涙した廖立
庶民に落とされてからの廖立は、
汶山郡でひっそりと田畑を耕しながら過ごします。
今は庶民に落ちてしまったけれども、
孔明がいつか自分ももう一度取り立てて復職させてくれると信じていたようです。
しかし五丈原で孔明がこの世を去った事を知ると、
「私の命運はこれで決まった。この地で生涯を追えるだろう」
と涙を流したそうです。
これを聞いて、李厳と同じだと思った人もいるんじゃないですかね？
李厳もまた孔明の死を心から悲しんだ一人でした。
自分らが庶民に落とされたとしても、
諸葛亮の刑罰が公正だったからと言えるエピソードだと思います。
また、これは姜維が汶山郡を通った際に廖立と話す機会がありました。
当時と変わらない態度を貫いた事に、逆に姜維は感心したという記録が残っています。
その後、廖立はこの地で没しています。
