黄巾の乱の勃発

後漢末期の霊帝の治世下に、
張角は自らを大賢良師と称し、道教の一種である太平道という教団を組織しました。
そして苦しい生活を強いられていた民衆をはじめ、多くの者達から支持を獲得するに至ります。
信者は青州・徐州・冀州・荊州・揚州・兗州・豫州の八州にも及び、
その数は十数年で数十万人に達したとされた事が「後漢書」皇甫嵩伝に残されています。
※古代の民間信仰や神仙説に道家の思想を加えたものが道教になります。
| 太平道は「太平清領書」を教典としており、
張角は病人に対して自らの罪を悔い改めさせた後に符水を飲ませ、 呪術により治癒を行っていたとされています。 |
光和七年(184年)になると、
張角が二人の弟である張宝・張梁と共に反乱を起こします。
その際に張角・張宝・張梁は天公将軍・地公将軍・人公将軍を名乗ったわけですが、
この反乱は信者が黄色の頭巾を被っていた事から黄巾の乱と呼ばれました。
- 張角(天公将軍)
- 張宝(地公将軍)
- 張梁(人公将軍)
ただこの黄巾の乱は単純な民衆による反乱ではなく、
霊帝に近い立場であった中常侍の封諝・徐奉らまでも内応させ、
漢王朝を内外同時に攻めようとしていていました。
ちなみにここで暗躍していたのは馬元義という人物になりますが、
唐周という人物が張角を裏切った事で計画が漏洩したことで、馬元義は車裂きの刑に処されます。
そして張角自身も反乱計画を前倒しにする形で決起するに至ったわけです。
| ~張角の反乱に伴う本来の構想~
①184年3月5日に外部と内部からの同時決起予定。 |
| ~黄巾賊のスローガン~
蒼天已死(蒼天已に死す) 黄天当立(黄天当に立つべし) 歳在甲子(歳は甲子に在り) 天下大吉(天下大吉なり)
蒼天(漢王朝)は既に死んでいる。 今こそ黄天(黄巾)が立ち上がるべき時である。 今は変革を告げる甲子の歳である。 全てがうまくいくはずだ。
ちなみに吉川英治や横山光輝による三国志では、「黄天」ではなく、「黄夫」と書かれています。 |
黄巾賊のシンボルカラー(黄色)

黄巾の乱のシンボルカラーは、
黄巾賊が頭に巻いた頭巾からも分かる通り黄色になります。
何故黄色の布を巻いていたかというと、五行思想(陰陽五行説)に基づいているとされています。
| 五行思想とは、世の中は木・火・土・金・水の五つから成り立っており、
その五つは互いに影響を与え合い、栄枯盛衰が変化して循環するといったような考え方になります。 |
漢の王朝は「火の王朝(赤)」であり、
その王朝を倒すのは「土の王朝(黄)」という意味であり、
だからこそ張角は黄色を黄巾賊のカラーとして掲げたというわけです。
ただ結局はこの土の王朝(黄)になったのは、
黄巾の乱から36年後になる220年に曹丕が建国した魏ということになります。
そしてその魏を滅ぼした晋(司馬炎が建国)は、
土の王朝(黄)の次にあたる「金の王朝(白)」になります。
漢王朝の黄巾賊討伐
内外同時作戦こそ失敗に終わり、大きく計画がずれてしまった張角でしたが、
各地で一斉蜂起した黄巾賊の勢いの前に漢軍は劣勢を強いられます。
これに霊帝は皇甫嵩・朱儁・盧植・董卓といった実績者を将軍に任じて、
各地の黄巾賊討伐にあたらせました。
ちなみに後に魏の礎を築いた曹操、
蜀漢を建国した劉備、呉を建国した孫権の父親である孫堅もまた黄巾賊討伐に参加しています。
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〈黄巾の乱の主な戦場&経過情報〉

①冀州・幽州方面
冀州(鉅鹿郡)を中心に張角・張宝・張梁らが暴れまわった地域になります。
→張角の病死&張宝・張梁の二人も皇甫嵩に討たれた事で黄巾賊側の敗北。
②荊州・揚州方面
荊州(南陽郡)を中心に張曼成・趙弘・韓忠・孫夏らが暴れまわった地域になります。
→豫洲方面の波才が敗れた後、朱儁らが続いて南陽郡でも勝利した事で黄巾賊側の敗北。
豫洲方面の波才が敗れると、勢いに乗った漢軍によって平定されています。
③豫洲・兗州方面

豫洲方面は波才が暴れまわった地域であり、潁川郡は一番の激戦区だったと言われています。
→朱儁・皇甫嵩・曹操等が力を合わせた事で波才を撃破する事に成功。
兗州方面では卜巳が暴れていましたが、これも皇甫嵩によって討ち取られています。
張角が起こした黄巾の乱は、皇甫嵩・朱儁らの働きによって、
結局1年程度で鎮圧されてしまったものの、
これにより漢王朝の寿命は更に縮まり、黄巾賊残党はこの後も各地で暴れ続けることとなります。
そして各地で力を持った豪族らが力を持っていき、
力を持たなければ生き残れない群雄割拠の時代へと突入していく事になるのでした。
ちなみに後日談になりますが、後に曹操が飛躍するきっかけになったのは、
青州の黄巾賊残党を自軍に組み入れ、青州兵と呼ばれた主力部隊のお陰だといえます。
もしも曹操が青州兵を手に入れていなかったら、
あれほどの領土拡大をすることは難しかったかもしれません。

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