正史の魏書「方枝伝」に記載されている人物として、

華佗(医術)や管輅(占い)が圧倒的に有名ではありますが、

 

占いの分野で「方技伝」に名が残る人物は

他にも杜夔・朱建平・周宣がいます。

 

 

ここでは周宣の占いが、どのようなものだったかを見ていきたいと思います。

杜夔(とき) -正史「方技伝」に名が残る偉大な音楽家-

朱建平 -正史「方技伝」に名が残る人相見(占い)の達人-

周宣(しゅうせん)

周宣はもともと漢の役人として仕えていましたが、

曹丕が「魏」を建国すると、曹丕に採り立てられた人物になります。

 

曹丕は周宣を中郎に任命し、太史の任務を兼任させたといいます。

 

 

そんな周宣ですが、いつ生まれたかは不明とされていますが、

239年まで生きたとされている人物ですね。

 

 

周宣は、夢占いを得意とした人物でもあり、

夢占いの逸話が複数正史の方に載せられています。

 

周宣の夢占いは十中八九的中したと言われており、

同じく正史「法技伝」に記載が残る朱建平(人相見)と並んで称されるほどだったといいます。

 

 

ただ私個人の考えですが、

朱建平の占いは遠い未来の時期をほぼ的確に当てているのに対して、

 

周宣の夢占いは、既に起こっていたり、

起こる直近のことばかりを指していることが多かったような感じがします。

 

 

はっきり言ってしまえば、

今の現状の社会情勢を知っていたら分かるものであったり、

 

人脈さえあれば自然と耳に入ってくるような話であったりと・・・

 

 

なので私個人の考えですが、朱建平の方が圧倒的に格上だとしか思えませんし、

並べて評価するのは朱建平に失礼な感じすらします。

 

それでは周宣の夢占いを紹介していきたいと思います。

朱建平 -正史「方技伝」に名が残る人相見(占い)の達人-

楊沛の夢占い

周宣がまだ役人を務めていた頃、

新鄭の長をしていた楊沛から相談を受けたことがありました。

 

その相談は、「ある人が私に対して、

8月1日に曹操殿が来て杖と薬酒をくれると言ってくる夢を見た」

というものでした。

 

 

お悩み相談を受けた周宣は、

「杖は力のない者達の支えとなるものであり、

薬酒は病気を治療するものです。

 

このことからも天下を騒がせている黄巾賊が、

8月1日に滅ぼされるという事でしょう。」と答えます。

 

 

その後、周宣の夢占いの通り、

黄巾賊が滅ぼされ見事に占いが当たったのでした。

 

 

 

少し補足しておくと、黄巾賊が8月1日に滅ぼされたというのは、

私の中ではよくわかりません。

 

 

張角・張宝・張梁の死亡時期と一致するわけでもないですし、

 

そもそも黄巾党残党は長く各地で暴れていますから、

おそらく新鄭の地域での黄巾賊が曹操に滅ぼされたという事だと思います。

劉楨の夢占い

劉楨といえば、「建安の七子」に含まれる人物ですが、

周宣に相談した夢占いは次のようなものでした。

 

四本足の蛇が、

門の中に穴を掘って住み着いた夢を見たと・・・

 

 

これに対して周宣は、

「この夢はあたなの事を暗示しているのではなく、

国家についての事を指しているのです。

 

蛇というのは女性を表し、

足は蛇にあるべきものではありません。

 

つまり将来女性が反乱を起こして誅殺されることを意味しています。」

と答えたのでした。

 

 

後に鄭・姜の二人の女賊が反乱を起こし、誅殺されています。

 

 

二人についての記載は、

この劉楨の占いのみにしか登場しない為に詳しい事は不明ですが、

 

劉楨は217年に亡くなっているので、おそらく210年代の話でしょうね。

建安七子の一人「劉楨」

曹丕の夢占い①

周宣は曹丕と関係が深かったこともあり、

曹丕の夢占いについての記録が複数残っていますので紹介します。

 

 

まず一つ目の曹丕の夢ですが、

 

宮殿の上の瓦が二枚落ちてきて、

二枚の瓦が雌雄の鴛鴦(オシドリ)に変化したというものでした。

 

それに対して周宣は、

「それは後宮で突然人が亡くなる前兆ですね」

と答えたのです。

 

 

 

しかしここで終わらないのが曹丕らしい逸話ですが、

「実は先程話した夢は嘘だよ」と返したわけです。

 

曹丕の言葉を聞いた周宣は、口を開きます。

「夢というのは心で思ったことに他ならないもの存在です。

 

だからこそ曹丕様が、

先程話したように心で思ったことを言葉で表したのですから、

 

それだけで吉凶は占えるものなのですよ」と・・・

 

 

周宣が上のように曹丕に返していた言葉が終わらないうちに、

宮廷内の女性が人を殺したと報告を受けたのでした。

曹丕 -漢を滅ぼし、魏を建国した初代皇帝-

曹丕の夢占い②

次の曹丕の夢相談は、青い気が地面から立ちのぼり、

その気が天まで昇っていくというものでした。

 

これを聞いた周宣は、

「高貴な女性が無実の罪で殺されます」と答えます。

 

 

それを聞いた時に曹丕は、

既に自分の側室であった甄氏(甄姫)に死を命じた直後で、

 

高貴な女性とは甄氏の事だとすぐに気づき、

甄氏への自害を急いで止めるように命じますが、間に合わず甄氏は自害したのでした。

傾国の美女、甄氏(甄皇后/甄姫/しんし) 〜曹操・曹丕・曹植を虜にした美貌〜

曹丕の夢占い③

最後の曹丕の夢相談は、

銅銭を削って文字を消そうとしたが、

 

その銅銭の文字は、

ますます見えるようになってきたというものでした。

 

 

それを聞いた周宣は何も答えず、

その様子を不思議に思った曹丕は重ねて尋ねます。

 

 

 

そこで周宣はゆっくりと口を開いて次のように応えます。

 

「その夢は曹丕様の家庭の事を暗示しています。

 

曹丕様は曹植様を処刑したいと思っているけれども、

卞大后(曹丕・曹植の母親)に反対されるでしょう」と・・・

 

 

まさに曹丕の現状をそのまま言い当てられていたわけです。

曹植 -中国文学の神になった「詩聖」-

人物不明の夢占い

誰が相談したのかは分かっていませんが、

祭祀で使う為の芻狗すうく(ワラで編まれた犬)を見たと相談されたことがあったようです。

 

周宣はこの夢相談に対して、

「その夢は御馳走にありつける夢ですよ」と答えたわけです。

 

 

またしばらくして、

「またが夢に出てきたんですけど・・・」と相談されると、

 

周宣は「馬車から落下して足を骨折しますよ」と返し、

 

その次も同じような質問を受けた時は、

「今度は火事が起きるのでお気を付けください」と返したのですが、

 

その夢占いは三つとも見事に的中したのでした。

 

 

 

そして三度質問した者は、

「実を言うと芻狗なんて一度も夢に見た事なんてなかったんですが、

何故的中できるのですか?

 

何より不思議に思うのは三つとも同じ相談なのに、

毎回違う結果だった理由をお聞かせください」と周宣に質問したのです。

 

 

どこか曹丕と似たような感じでもありますが、

 

周宣はその質問に対して、

「あなたが口に出して言ったことは、

神様が言わせた事なんですよ。

 

だからあなたが実際に夢を見たことと同じわけです。

 

また毎回違う結果だったのかというと、

芻狗というものはそもそも祭祀に使われ、お供え物をされます。

 

だから1回目が御馳走にありつけるといったわけです。

 

 

また芻狗は祭祀が終了すると馬車で轢かれ、

最終的に馬車ごと燃やされてしまいます。

 

だから2回目は足を骨折すると言い、

3回目は火事が起こると言ったのです」と答えてあげたのでした。